計算例も紹介!燃焼空気量の求め方

  • 2021年8月22日
  • 2022年10月8日
  • ボイラ

  • 理論燃焼空気量の求め方を知りたい

こんな人に向けた記事です。

こんにちは。

プラントエンジニアの火プライオンです。

この記事では、理論燃焼空気量の求め方について解説します。

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発熱を伴う燃焼反応

燃焼とは、燃焼物が空気との化学反応によって熱を放出する現象を指します。

私たちが普段見ている「火」は、燃料が空気との化学反応によって放出されたエネルギーが光として見えているものです。

燃焼に必要な空気量は、燃料中の成分(炭素、水素、硫黄)のそれぞれの燃焼反応に必要な酸素量を求めれば良いです。

それぞれの燃焼反応を下記に上げます。

【炭素】

$$C + O_2 = CO_2 + 8,080kcal (完全燃焼)$$

【水素】

$$H + \frac{1}{2}O_2 = H_2 O + 34,200kcal (水液体)$$

$$H + \frac{1}{2}O_2 = H_2 O + 28,800kcal (水気体)$$

【硫黄】

$$S + O_2 = SO_2 + 2,500kcal $$

 

理論燃焼空気量の求め方

炭素C、水素H、硫黄Sの1kgあたりの燃焼反応に必要な空気量を求めていきましょう。

【炭素】

炭素1molの燃焼に必要な酸素分子は1molです。

炭素の原子量(1molあたりの質量)は12 g、酸素分子の1molあたりの体積は22.4 [ℓ]なので、炭素1molあたり

$$C (12[g])+O_2 (22.4[ℓ] ) = CO_2 (22.4[ℓ] ) $$

となります。

よって、炭素1g当たりの必要酸素量ACO2は、

$$A _{CO2} = \frac{22.4}{12} = 1.867 [ ℓ / g] $$

単位を1kgあたりに直して

$$A _{CO2} = 1.867 [Nm^3/kg]$$

【水素】

水素分子1molの燃焼に必要な酸素分子は0.5molです。

水素分子の1molあたりの質量は2gで、 酸素分子の0.5molあたりの体積は11.2 ℓなので、水素分子1molあたり

$$H_2 (2[g])+\frac{1}{2}O_2 (11.2[ℓ] ) = H_2 O (22.4[ℓ] ) $$

となります。

よって、水素分子1g当たりの必要酸素量AHO2

$$A _{HO2} = \frac{11.2}{2} = 5.6 [ ℓ / g]$$

単位を1kgあたりに直して

$$A _{HO2} = 5.6[Nm^3/kg]$$

また、燃料中に酸素O2が含まれている場合は、燃えやすい水素で優先的に消費されると考えて、

$$A_{HO2} = 5.6 * (H – \frac{O}{\frac{1}{2}*16})$$

となります。

 
火プライオン
酸素の下の分母の16は酸素の原子量だよ
水素H2つにつき必要な酸素は1つなので1/2しているよ
燃料中に含まれる酸素Oがあれば、必要酸素量から引いておこう

 

【硫黄】

硫黄1molの燃焼に必要な酸素分子は1molです。

硫黄の原子量は32 [g]、酸素分子の1molあたりの体積は22.4 ℓなので、硫黄1molあたり

$$S(32[g])+O_2 (22.4[ℓ] ) = SO_2 (22.4[ℓ] ) $$

硫黄1g当たりの必要酸素量ASO2は、

$$A _{SO2} = \frac{22.4}{32} = 0.7[ ℓ / g]$$

単位を1kgあたりに直して

$$A _{SO2}= 0.7 [Nm^3/kg]$$

 

 

以上をまとめると

必要酸素量AO2は、燃料1kgあたりの炭素、水素、硫黄、酸素の各重量[kg]をC, H , S, Oとして次のようになります。

$$A_{O2} = 1.867C + 5.6 (H-\frac{1}{8}O) + 0.7S$$

また、空気中に含まれる酸素は体積ベースで21%なので、

理論燃焼空気量Aair

$$A_{air} = \frac{1}{0.21} \left\{1.867C +5.6(H-\frac{1}{8}O) + 0.7S\right\}$$

となります。

計算例

では、重油を例に理論燃焼空気量を求めてみましょう。

一般的な重油の成分は以下の通りです。

元素重量パーセント[wt%]
C87.8
H10.5
S1.2
O0.4
N0.1

これを下式に代入して

$$A_{air} = \frac{1}{0.21} \left\{1.867C +5.6 (H-\frac{1}{8}O) + 0.7S\right\}$$

$$ \qquad = \frac{1}{0.21} \left\{1.867*0.878 + 5.6 (0.105-\frac{1}{8}*0.004) + 0.7*0.012\right\}$$

$$\qquad= 10.6[Nm^3/kg]$$

となります。

 
火プライオン
窒素Nは燃焼反応しないので、無視だよ。

実際燃焼空気量

以上で、重油の燃焼に必要な空気量が求まりましたが、実際の燃焼では投入空気すべてが完全に燃焼で消費されるわけではないので、計算で求めた空気量より多めに空気を投入します。

重油では、1.2~1.3倍程度の空気を入れるので、実際の投入空気量A0

$$A_0 = 10.6 * 1.2 = 12.7 [Nm^3/kg]$$

となります。

 
火プライオン
多めに入れる空気の割合を空気比λと呼ぶよ。
上の重油の例では、空気比λ=1.2だね。
ガス燃焼の時は空気比λ=1.1~1.2となるよ。

以上参考になれば幸いです。

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