なぜ、脱気器は設置する?役割や構造を分かりやすく解説します。

脱気器についてわかりやすく解説します。

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脱気器の役割

脱気器の主な役割は以下の通りです。

・ボイラ給水中の溶存酸素を取り除く

 

・給水ポンプ一次側の貯水槽

それぞれについて解説します。

溶存酸素の除去

大気中の酸素は水に溶け込み、高圧・高温の環境下にて著しく鉄を腐食します。

そのため、ボイラに給水を送る前に給水の溶存酸素を取り除かなければなりません。

酸素などの気体は、飽和温度の水には溶け込むことが出来ないので、脱気器にて給水を蒸気で飽和温度まで加熱し、酸素を取り除きます。

脱気器には、酸素を排出すためにベント管(排気管)があり、ここからガスを排出します。

給水中の酸素による鉄の腐食は、こちらの記事↓を参考にしてください。

給水ポンプ一次側の貯水槽

脱気器には水を蓄える貯水槽としての役割もあります。

脱気器の後流側に設置するボイラ給水ポンプは、プラントの中でも最も重要な機器の一つで、それなりに高価です。

ボイラ給水ポンプへの給水が止まってしまうと、ボイラ給水ポンプでキャビテーションが起こり、ポンプが故障してしまいます。

これを避けるために、脱気器ではある程度の水を貯めることが出来るようになっています。

万が一脱気器への給水がストップしても、ボイラ給水ポンプが安全に停止するまで、ポンプへの給水が途絶えないようにしています。

 
火プライオン
脱気器はボイラの負荷変動に対応するためのバッファーとしての役割もあります。
脱気器の貯水量をコントロールするために、調節弁で脱気器の水面レベルを制御します。
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単胴型と二胴型


脱気器は単胴型とニ胴型の2種類あります。

下図の左側が単胴型、右側がニ胴型の脱気器の外形図です。

       

ボイラの蒸発量や負荷変動が小さく、貯水量を多く必要としない場合は単胴型を採用します。

貯水槽と脱気槽を共通化することが出来てコストメリットがあるからです。

貯水量が多く必要な場合は、脱気槽(上部)と貯水槽(下部)に分かれたニ胴型を採用します。


貯水量を多く必要とする場合に単胴型を採用すると、貯水量を確保するために縦に大きな容器となり、負荷変動によってボイラ給水ポンプの有効NPSHが大きく変動するため、その分高い位置に脱気器を設置する必要が出てきます。

この為、脱気器の貯水量が多く必要な場合は、水平方向に容量を大きく取れるニ胴型を採用します。

 
火プライオン
単胴型で水平方向に大きな容器にすると、容器の必要肉厚が大きくなってコストが余計にかかるよ

脱気器の器内温度と圧力

脱気器の器内圧力は脱気器内の水温の飽和蒸気圧となるため、脱気器の出口給水温度(脱気器の器内温度)が決まれば、おのずと圧力も決まります。

脱気器出口給水温度は以下のように決まります。

【上限】
・ボイラ給水ポンプの耐熱温度

【下限】
・供給される給水の温度より10〜20℃高い温度
・ボイラ排ガスの酸露点(脱気器後流側が節炭器の場合)

【上限について】
脱気器の後流側に設置するボイラ給水ポンプの耐熱温度が上限となります。

ボイラ給水ポンプはかなりの高圧まで給水を昇圧させるため、昇圧できる給水の温度に上限があります。

ポンプメーカーや吐出圧などの条件によりますが、180℃が上限になることが多いようです。


【下限について】

脱気器出口給水温度は、脱気器入口給水温度より10~20℃ほど高くなければなりません

これ以上低くなると、脱気するための蒸気量が不足してしまうからです。

 
火プライオン
給水をまんべんなく加熱し脱気性能を確保するためには、ある程度の蒸気流量が必要だよ。

また、脱気器後流側に給水加熱器などを設置せず、

脱気器出口給水温度 = 節炭器入口給水温度

の場合は、ボイラ排ガスの酸露点に注意が必要です。

酸露点より低い給水が節炭器に入ると節炭器表面で硫酸が結露し、節炭器管が腐食してしまいます。

排ガス中の水分量が多く、硫黄分が多い排ガスの場合は、酸露点が低いので節炭器入口給水温度に注意が必要です。

脱気器の設置位置

脱気器の後流側には一般的にボイラ給水ポンプを設置します。

ボイラ給水ポンプはかなり高圧まで給水を昇圧させるため、要求NPSH(要求吸込みヘッド;ボイラ給水ポンプ入口にて必要な給水の圧力)が他ポンプに比べて高いです。

このため、NPSHを確保するため、脱気器は高いところに設置されるのが一般的です。

配置スペースの制約でNPSHを確保できない場合は、ブースターポンプを設置する場合があります。

 
火プライオン
脱気器を高い位置に設置して、水頭圧を稼ぐんだね。
ブースターポンプとはボイラ給水ポンプの入口圧力を高くするためポンプだよ。

スプレー・トレイ

脱気器は、ベントから漏れる蒸気量を少なくするために、以下二つの方法を採用する場合が多いです。

①給水をスプレーして、脱気器内に吹き込む

②給水をトレイに当てる

これにより、給水がより細かく脱気器に吹き込まれることで、脱気器内の蒸気が給水に触れる機会を多くなり、ベントから排出されてしまう蒸気量を減らすことが出来ます。

ベントコンデンサ

大型の脱気器を用いて大容量の給水を処理する場合には、ベントから排出されるガスや蒸気の量が多くなり、捨てられる熱が勿体ないので、ベントコンデンサを設置して熱回収します。

ベントコンデンサは、蛇管内に給水、蛇管外側にベントガスやベント蒸気を通すことで熱交換をする機器です。

脱気器は給水加熱器?

脱気器は、給水に直接蒸気を吹き込んで加熱するため直接給水加熱器とも呼ばれます。

一般的に給水加熱器といえば、間接給水加熱器であるシェルアンドチューブ式給水加熱器をさします。

この給水加熱器は、管を通して伝熱を行う給水加熱器で、詳細は別記事にて解説します。

直接給水加熱器である脱気器は、蒸気を直接吹き込むため、蒸気が持つ熱量のすべてを給水を加熱するのに使用出来ます。

一方で間接加熱器は、潜熱を給水に伝熱した後のドレン(=もともと蒸気だったが、熱交換により凝縮した水をドレンと言う)が持つ熱量の大部分は給水に移すことができません。

このため、給水加熱器としては間接加熱器の方が有利です。

 
火プライオン
間接過熱器でドレンの熱を回収しようと思ったら、かなりの伝面が必要になるので現実的ではないよ。


しかし、脱気器の後流側には必ずポンプを置かなければいけない為、殆どのプラントで脱気器は一つしか設置しません。

 
火プライオン

脱気器の器内圧力は、脱気器内の給水温度の飽和蒸気圧より高くならないので、脱気器の後流側にはポンプが必要になるよ。

脱気器へ流入する水・蒸気

脱気器へ流入する水・蒸気は以下が挙げられます。これは、プラントによって大きく変わる部分ですのであくまで参考例です。

・給水
・加熱蒸気
・ボイラ給水ポンプで昇圧された給水(過熱防止)
・蒸気式空気過熱器のドレン
・蒸気式給水加熱器のドレン
・ボイラブロー水の蒸気
・薬品
など
 

以上、参考になれば幸いです。

↓ おすすめの参考書はこちら

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