意外と知らない?ボイラ圧力と伝面構成の関係

こんな疑問をお持ちの方に向けた記事です。

  • ボイラの蒸気圧力を変えると、ボイラの伝面構成がどのように変化するのか知りたい。
  • なぜ、ボイラ蒸気圧が高くなれば蒸発器の伝面は少なくて済むのか知りたい。

  • ボイラの蒸気圧が高ければ高いほど過熱器の伝面が多く必要となる理由を知りたい。
 

この記事では、ボイラの蒸気圧力とボイラの伝面構成の関係を紹介したいと思います。

今、仮にあなたが使用しているボイラの蒸気圧力を上げるとしたら、ボイラの伝面構成はどのように変更する必要があるのでしょうか?

圧力と水の状態変化の関係から見ていきたいと思います。

 

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圧力と水の状態変化

下図は横軸に圧力、縦軸に熱量を取ったグラフで、水・蒸気の状態変化を表しています。

まずは、この線図をもとに圧力と水の状態変化の関係を見ていきましょう。

グラフの下側、青色の部分は、水が液体の状態を示しています。

グラフの中央、オレンジ色の部分は、飽和水と飽和蒸気が入り混じった状態です。

青色オレンジ色の境界部分に到達すると沸騰が始まり、水はその温度以上に上昇しなくなります。このときの温度と圧力をそれぞれ、飽和温度(沸点、沸騰点)、飽和圧力といい、この時の水を飽和水と言います。圧力が高くなれ飽和温度は高くなります。

飽和水になるまで加えた熱量を顕熱といい、飽和水を蒸発させる熱を潜熱と言います。

潜熱は圧力が上昇するにしたがって減少し、22.06MPaに達すると0になります。この時の圧力を臨界点と呼びます。

飽和水を加熱すると水の温度は上昇しないで沸騰を続け、蒸気を発生させます。この時の蒸気を飽和蒸気と呼びます。

赤色の部分では、水は全て蒸発し加熱すれば蒸気の温度は上がっていき、過熱蒸気となります。

蒸気圧力とボイラの伝面構成の関係

ボイラは主に以下の伝面で構成されています。

・節炭器

・蒸発器、水壁管

・過熱器

各機器の詳細な説明はこちらの記事を参考にしてください。

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ボイラ圧力が上昇すると各伝面がどのように変化するのか、それぞれについて見ていきましょう。

節炭器

節炭器の給水出口温度は、管内の給水が蒸発しないように伝熱面積が決められています。節炭器管は、一般的に蒸気が抜けていく構造をしていないので、節炭器管内で蒸気が発生してしまうと、蒸気が滞留して管表面温度が上昇し、最悪の場合、管が焼損、破裂してしまうからです。

前述したようにボイラの圧力が上がると、水の沸点は上がりますので、節炭器の出口温度をより高く設定することが出来ます。つまり、節炭器の伝熱面積をより多く取ることが出来ます。

 
火プライオン
節炭器の給水出口温度は、飽和温度より10℃以上低く設計するのが一般的だよ。

蒸発器、水壁管

ボイラ水の圧力が上がるとその潜熱(水を蒸発させるのに必要な熱量)は小さくなりますので、蒸発器や水壁管の伝熱面積は少なくて済みます。

 
火プライオン
圧力の高いボイラでは、蒸発器(蛇管の蒸発器)が設置されているのはあまり見ないよね?水壁管だけで伝熱面積が確保できるんだろうね!

過熱器

圧力が上がると潜熱が減る一方で、蒸気を過熱するのに必要な熱量は増えるので、過熱器の必要伝面は増加します。圧力がかなり高くなるとボイラの煙道を形成する水壁管の一部の内部流体を蒸気にして、過熱器のように使用する場合もあります。

まとめ

下図のようにボイラ圧力が高くなると、蒸発器・水壁管の必要伝熱面積は減り、過熱器の必要伝熱面積が増えて、節炭器を設置できる伝熱面積も増加します。

以上、参考になれば幸いです。

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