再生サイクルによる熱効率の改善理由を分かりやすく解説します。

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再生サイクルの構成機器

再生サイクルとは、タービン内で膨張しつつある蒸気をタービン外へ排出して(抽気して)、ボイラ給水を暖めるシステムをランキンサイクルに追加したサイクルを言います。

下図は再生サイクルの概略図です。

ボイラ、タービン、復水器、ポンプで構成される基本的なランキンサイクルに給水加熱器を追加しています。

給水加熱器の熱源となる蒸気は、タービン内で膨張しつつある蒸気を抜き取って使用するので、これを給水加熱器へ送気する配管と給水加熱器で発生したドレンを復水器へ戻す配管も追加しています。

再生サイクルを設置するとプラント効率が上がる理由

給水加熱器を設置し、タービン抽気を用いてボイラ給水を加熱することで火力ボイラプラント全体の熱効率が改善します。

 
火プライオン
タービンで膨張している蒸気を途中で抜いたら、その分タービンの仕事量も減るのになぜ効率が良くなるの?

それは、復水器で捨てられる筈だった蒸気の凝縮熱を、ボイラの給水を加熱するのに使用することで、ボイラで使用する燃料消費量を減らす事が出来るからです。もちろん抽気された蒸気がタービンで仕事をする筈だった熱量も、ボイラの給水を加熱するのに使用されます。

復水タービンでは、タービンの効率を上昇させるために、復水器によってタービン出口の蒸気を冷やして凝縮し(水に戻し)、タービン背圧を真空にします。(背圧を下げる事でタービン効率が高くなる理由はこちら

タービンでは凝縮熱を仕事に変換出来ないからです。(蒸気タービンに湿り度が高い蒸気を当てるとタービン翼がボロボロになってしまいます。)

この捨てられるはずだった熱量を有効利用することで、熱効率が改善します。

 
火プライオン
タービンでは蒸気の凝縮熱を仕事に変換できず、復水器にてタービン背圧を下げるために凝縮熱を捨てます。一方で、給水を温めるために凝縮熱を有効利用することは出来ます。

再熱サイクルのT-S線図

T-S線図で詳細を見てみましょう。

④でタービンに入った膨張中の蒸気の一部が⑤でタービンの外へ排出され給水を加熱するのに使用されます。(⑤から左へ伸びている赤い点線が給水加熱内の蒸気を示します。)

その他の蒸気はタービンで最大限仕事を行い、⑥で復水器へと排出されます。

復水器で凝縮された水は、加熱器で凝縮した水(ドレン)⑦と合流します。

復水器を出た給水①はポンプによって圧縮水②となり、タービン抽気で加熱されて圧縮温水③となりボイラへ送られます。

ここで、⑥~①の過程で捨てられる筈だった熱の一部が⑤~⑦の過程で給水を加熱するのに使用されます。

そして、②~③で加熱された熱量分だけボイラで使用される燃料を節約することが出来ます。

下図の赤い部分の抽気した蒸気量分の熱量が捨てられずに有効利用されたことになります。

たくさん抽気すればするほど熱効率は上がる?

理論的にはタービンからの抽気数が多ければ多いほど火力プラントの効率は向上しますが、タービンの構造や経済性の制約から、産業用の火力プラントで3~5回ほど、事業用の超高圧・高温の火力プラントでも8回の抽気が最大のようです。

以上、参考になれば幸いです。

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